2026/07/23
相続預金の払戻し制度 ― 解約前にできる仮払い
2026/07/23
相続預金の払戻し制度 ― 解約前にできる仮払い
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
相続が始まると、葬儀費用や入院費の精算、施設の退去費用、公共料金の支払いなど、すぐに現金が必要になる場面が多くあります。
しかし、故人名義の預貯金は原則として「相続人全員の同意がなければ解約できない」ため、すぐに引き出せず困ってしまうご家族が少なくありません。
こうした不便を解消するために、平成30年の民法改正で新しく導入されたのが「相続預金の払戻し制度」です。
これは、遺産分割協議が整う前でも、一定額を金融機関から払い戻してもらえ、急な支払いに備えるための“つなぎ資金”として、とても役立つ制度です。
なぜ仮払い制度が必要なのか
従来は、故人名義の預金を引き出すためには、相続人全員の署名・押印が必要でした。
相続人同士が遠方に住んでいる、連絡がつかない、関係が悪いなどの事情があると、預金の解約が長期間できず、葬儀費用の支払いに困るケースが多くあったのです。
こうした不都合を解消するため、民法改正により「相続人の一部だけで一定額を引き出せる制度」が整備されました。
それが相続預金の払戻し制度です。
払戻し制度で引き出せる金額
この仮払い制度で引き出せる金額は、法律で明確に上限が決められていて、計算式は次のようになっています。
故人の預金残高 × 1/3 × 自分の法定相続分
例えば、故人の口座に900万円の預金があり、相続人が子ども2人の場合、子どもの法定相続分は1/2です。
この場合、仮払い制度で引き出せる上限額は「900万円 × 1/3 × 1/2 = 150万円」となります。
この制度は「生活費や葬儀費用など、急ぎの支払いに対応するための制度」であるため、全額を引き出すことはできません。
あくまで“つなぎ資金”として利用できるという位置づけのものであるということに注意しましょう。
金融機関ごとの独自制度もある
民法の仮払い制度とは別に、金融機関が独自に設けている「個別の仮払い制度」もあります。
これは、葬儀費用の領収書を提示することで、必要な金額を払い戻してくれる仕組みで、民法の制度より柔軟に運用されていることがあります。
民法の制度と併用できる場合もあるため、まずは故人が利用していた金融機関に問い合わせることが大切です。
払戻し制度を利用するために必要な書類
金融機関によって多少異なりますが、一般的には次の書類が必要です。
・故人の戸籍(除籍)謄本
・相続人の戸籍謄本
・故人の預金通帳
・相続人の本人確認書類
・金融機関所定の申請書類
遺産分割協議書は不要で、相続人全員の同意も必要ありません。
相続人の一人が申請すれば利用できます。
利用する際の注意点
相続預金の払戻し制度で引き出した金額は、最終的な遺産分割の際に「すでに受け取ったもの」として扱われます。
このため、遺産分割協議の中で調整されるため、他の相続人との関係性を考えながら利用することが大切です。
また、相続人同士の争いが激しい場合は、金融機関が慎重な対応を取ることがあります。原則は「相続人の一部だけで利用できる制度」ですが、トラブルが予想される場合は、追加書類を求められる例外もあります。
どんな場面で役立つか
相続預金の払戻し制度が最も役立つのは、葬儀費用や医療費の精算など、急ぎの支払いが必要な場面です。
葬儀費用は数十万円〜百万円以上かかることもあり、手元資金だけでは足りないことがあります。こうしたときに仮払い制度を利用すれば、相続人全員の同意を待たずに必要な資金を確保できます。
また、公共料金の支払い、施設の退去費用、介護施設の未払い分など、相続開始直後に発生する支払いにも役立ちます。
遺産分割協議が長引く場合でも、生活に必要な支払いを滞らせずに済むため、安心して手続きを進められます。
急ぎの支払いに備える“安心の制度”
相続預金の払戻し制度は、遺産分割協議が整う前でも一定額を払い戻せる便利な制度です。相続人の一部だけで手続きが可能なため、葬儀費用や医療費の精算など、急ぎの支払いにとても役立ちます。
ただし、利用には上限額があり、最終的な遺産分割で調整されるため、家族間のコミュニケーションがとても重要です。
行政書士法人エニシアでは、相続預金の払戻し制度の利用方法についてのご相談のほか、ご自身で行うことが難しい場合の預金解約手続きの代行など相続手続き丁寧にサポートしています。
お困りの方はぜひご相談ください。
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