2026/07/27
相続分の譲渡
2026/07/27
相続分の譲渡
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
相続のご相談を受けていると、「相続分を兄に譲りたいのですが、どうすればいいですか?」「相続に関わりたくないので、取り分を放棄したい」という声を耳にすることがあります。
こうしたときに関係してくる方法に「相続分の譲渡」というものがあります。
相続分の譲渡とは、簡単に言えば「自分の相続分を他の人に渡すこと」です。遺産分割協議とは別に、相続人が自分の取り分を譲ることができる制度で、民法に規定されています。
相続人同士の関係性や、相続に関わる負担を減らしたい場合などに利用されることがあります。
相続分の譲渡は“相続放棄”とは違う
まず押さえておきたいのは、相続分の譲渡は「相続放棄」とはまったく別の制度だという点です。
相続放棄は家庭裁判所に申述し、法律上「最初から相続人ではなかった」扱いになります。
一方、相続分の譲渡は、相続人であることは変わらず、自分の取り分だけを他の人に渡す制度です。
つまり、相続放棄は裁判所の手続きが必要ですが、相続分の譲渡は契約書を作成するだけで成立するという点で違いがあるのです。
誰に譲渡できるのか
相続分の譲渡は、相続人だけでなく第三者にも譲渡できます。
例えば、兄弟に譲ることもできますし、親族以外の友人や法人に譲ることも可能です。
ただし、第三者に譲渡する場合は、他の相続人にとって予期しない人物が相続に関わることになるため、実際に行う際には慎重な判断が必要です。
相続人同士で譲渡する場合は、遺産分割協議の一環として自然に進められることが多く、トラブルも比較的少ないといえるでしょう。
譲渡するとどうなる?
相続分を譲渡すると、譲渡した人は遺産分割協議に参加する権利を失います。
代わりに、譲り受けた人がその相続分を引き継ぎ、遺産分割協議に参加することになります。
例えば、相続人が3人で、それぞれ1/3ずつの相続分を持っている場合に、AさんがBさんへ相続分を譲渡すると、Bさんは2/3の相続分を持つことになります。Aさんは遺産分割協議に参加しなくてもよくなり、取り分もなくなる、となります。
譲渡の方法と必要書類
相続分の譲渡は、契約書を作成することで成立します。
書式は自由ですが、一般的には次の内容を記載します。
・譲渡する相続分の内容
・譲渡人と譲受人の氏名・住所
・相続の発生原因(被相続人の氏名・死亡日)
・譲渡の合意内容
・日付と署名押印
公正証書にする必要はありませんが、後のトラブルを防ぐために、できるだけ丁寧に作成することが望ましいです。
相続分の譲渡で注意すべきこと
相続分の譲渡は便利な制度ですが、利用する際にはいくつか注意点があります。
まず、譲渡すると遺産分割協議に参加できなくなるため、後から「やっぱり話し合いに参加したい」と思っても戻ることはできません。
譲渡は取り消しが難しいため、慎重な判断が必要です。
また、譲渡を受けた人は、譲渡人の相続分をそのまま引き継ぐため、遺産分割協議の内容によっては大きな負担を抱えることがあります。
特に不動産が絡む場合は、固定資産税や管理の負担も発生するため、譲受人の生活状況も考慮する必要があります。
税金の扱い ― 譲渡は「贈与」とみなされることがある
相続分の譲渡は、税金の面でも注意が必要です。
相続人同士で無償で譲渡した場合、税務上は贈与とみなされる可能性があります。
つまり、譲受人に贈与税が課されることがあるということです。
ただし、遺産分割協議の中で「相続分を調整する」形で行う場合は、贈与税がかからないこともあります。
税務上の扱いはケースによって異なるため、譲渡を検討する際は税理士など専門家とも検討することが望ましいです。
トラブルを防ぐためのポイント
相続分の譲渡は、家族間の感情が絡みやすい制度です。
特に、兄弟間で譲渡する場合は、「不公平だ」「押しつけられた」といった誤解が生じることがあります。
トラブルを防ぐためには、次の点が重要です。
まず、譲渡の理由を丁寧に説明することです。
「相続に関わる時間が取れない」「不動産の管理が難しい」「兄が中心となって手続きを進めてくれている」など、前向きな理由を伝えることで理解を得やすくなります。
また、譲渡契約書をしっかり作成し、後から内容を確認できるようにしておくことも大切です。
口頭での約束は誤解を招きやすく、トラブルの原因になります。
相続分を譲渡すべきかどうかの判断ポイント
相続分の譲渡は、誰にでも適している制度ではありません。
譲渡すべきかどうか判断する際は、次の点を考えることが大切です。
まず、自分が相続に関わる負担をどれだけ抱えているかを考えます。仕事や家庭の事情で手続きに関われない場合は、譲渡が有効な選択肢になることがあります。
次に、譲受人との関係性です。譲渡は大きな責任を伴うため、信頼できる相続人に譲ることが望ましいです。第三者に譲渡する場合は、家族の理解を得ることが欠かせません。
最後に、税金の負担です。譲渡が贈与とみなされる可能性があるため、税務上の影響を確認しておくことが重要です。
相続分の譲渡は、自分の取り分を他の人に渡すことができる便利な制度ですが、遺産分割協議への参加権を失うなどの注意点があります。
また、税務上の扱いが複雑な場合もあるため、慎重な判断が必要です。
行政書士法人エニシアでは、相続分の譲渡契約書の作成、遺産分割協議の進め方、税理士と連携した税務の検討など、状況に合わせて丁寧にサポートしています。
自分に合った方法をお探しの方はぜひご相談ください。
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