2026/08/10
相続税の配偶者控除
2026/08/10
相続税の配偶者控除
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
相続の話題のなかで、「配偶者が相続すれば税金はかからない?」「妻に全部相続させれば節税になる?」という疑問が湧いてくることがあると思います。
確かに、配偶者が相続する場合には非常に大きな相続税の優遇制度があり、それが配偶者控除(配偶者の税額軽減)というものです。
この制度は、配偶者が取得した財産について1億6,000万円または法定相続分(1/2)のどちらか多い金額まで相続税がかからないという、非常に強力な特例です。国税庁も「配偶者の生活保障のために設けられた制度」と説明しています。
ただし、強力な制度であるがゆえに誤解も多く、使い方を誤ると「二次相続で税負担が増える」という落とし穴もあります。
今回は、制度の仕組み、使える条件、誤解されやすいポイントなどについてお話しいたします。
相続税の配偶者控除とは?
相続税の配偶者控除とは、配偶者が相続した財産について、次のどちらか多い金額まで相続税がかからない制度です。
・1億6,000万円
・法定相続分(遺産総額の1/2)
例えば、遺産が1億円であれば、配偶者が全額を相続しても相続税はかかりません。遺産が4億円であれば、配偶者が2億円(法定相続分)まで非課税になります。
この制度は、残された配偶者の生活を守るために設けられたもので、相続税の中でも最も大きな優遇措置です。
制度を使うための3つの条件
配偶者控除は「配偶者なら自動的に使える制度」ではありません。
次の3つの条件を満たす必要があります。
① 法律上の配偶者であること
戸籍上の婚姻関係が必要で、事実婚や内縁関係は対象外です。
② 遺産分割が完了していること
誰がどの財産を取得するかが確定していなければ、配偶者控除は使えません。未分割のまま申告期限を迎えると原則適用不可です。
③ 相続税の申告書を期限内に提出すること
税額がゼロになる場合でも申告は必須です。申告しなければ特例は使えません。
この3つの条件がそろって初めて、配偶者控除が適用されます。
「未分割」のまま申告期限を迎えた場合
遺産分割が申告期限(10か月)までにまとまらない場合、原則として配偶者控除は使えません。
しかし、救済措置として「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、後から適用できる場合があります。
ただし、分割が成立したら4か月以内に更正の請求を行う必要があり、税理士と相談の上での期限管理が非常に重要です。
配偶者控除の誤解と注意点
配偶者控除は強力な制度ですが、誤解されやすいポイントがいくつかあります。
● 「配偶者が相続すれば税金ゼロ」は半分正しく、半分誤り
配偶者の取得額が非課税枠以内であれば税金はゼロですが、他の相続人(子など)には相続税がかかる場合があります。
● 固定資産税評価額ではなく「相続税評価額」で判定する
土地は路線価方式などで評価されるため、固定資産税評価額とは異なります。評価額を誤認すると、控除の判定を誤ることがあります。
● 遺産分割が終わっていないと使えない
「とりあえず申告して後で分ける」は原則不可です。未分割申告は特例適用に大きな制限があります。
配偶者控除の“落とし穴”──二次相続で税負担が増えることがある
配偶者控除を使うと、一次相続(夫が亡くなったとき)では大きな節税効果があります。
しかし、ここで注意したいのが二次相続(妻が亡くなったとき)です。
一次相続で配偶者が多く相続すると、妻の財産が増えます。
そして二次相続では配偶者控除が使えないため、子どもが相続税を負担することになります。
また、二次相続では法定相続人が減るため、基礎控除額も減少します。
・一次相続:配偶者+子2人 → 基礎控除4,800万円
・二次相続:子2人のみ → 基礎控除4,200万円
このように、一次相続で配偶者に集中させると、二次相続で税負担が増えることがあるのです。
そのため、一次相続では「配偶者に全部渡す」のではなく、配偶者の生活保障と二次相続の税負担のバランスを考えることが重要です。
強力な制度だからこそ、正しい理解が必要
相続税の配偶者控除は、配偶者の生活を守るための非常に強力な制度です。
1億6,000万円または法定相続分まで非課税になるため、一次相続では大きな節税効果があります。
しかし、制度の適用には条件があり、誤解されやすいポイントも多く、二次相続の税負担にも注意が必要です。
制度を正しく理解し、家族全体の税負担を見据えたうえで活用することが大切です。
行政書士法人エニシアでは、税理士との連携し、配偶者控除の適用判断をはじめとした相続税のシミュレーションを踏まえた遺産分割協議書の作成など、状況に合わせて丁寧にサポートしています。
どうぞお気軽にご相談ください。
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