2026/08/12
相続時預貯金口座照会制度
2026/08/12
相続時預貯金口座照会制度
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
相続のご相談で非常に多いのが、「故人がどこの銀行に口座を持っていたか分からない」というお悩みです。
通帳が見当たらない、ネット銀行を使っていたかもしれない、キャッシュカードが複数あるがどれが現役なのか分からない──こうした状況は珍しくありません。
従来は、心当たりのある銀行を一つずつ回って照会するしかなく、時間も労力もかかりました。
そこで2025年4月から始まったのが「相続時預貯金口座照会制度」です。
全国の金融機関に対して、故人名義の口座があるかどうかを一括で確認できる制度で、相続の初動を大きく助けてくれる仕組みです。
ただし、この制度は「万能」ではありません。便利な一方で、誤解されやすい点や限界もあります。
今回は、制度の仕組み、使える場面、注意点などについてお話しします。
相続時預貯金口座照会制度とは?
相続時預貯金口座照会制度は、相続人が金融機関を通じて、故人名義の預貯金口座の所在を一括で照会できる制度です。
預金保険機構が全国の金融機関に照会をかけ、どの銀行・どの支店に口座があるかをまとめて通知してくれます。
これまでのように、銀行を一件ずつ回る必要がなくなるため、財産調査の負担が大きく軽減されます。
ネット銀行や通帳レス口座が増えている現代では、特に有効な制度です。
照会で「分かること」と「分からないこと」
この制度で分かるのは、あくまで口座の所在(どこにあるか)までです。
● 分かる:金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、預貯金者名
● 分からない:残高、取引履歴、証券口座の情報
残高は通知されないため、相続税申告や遺産分割に必要な金額を把握するには、照会結果をもとに各金融機関で残高証明書を取得する必要があります。
「口座がどこにあるか分かる制度」であり、「残高が分かる制度」ではない点は、誤解されやすいポイントです。
マイナンバー付番済み口座しか照会できない
非常に便利なこの制度ですが、実は利用上の限界があります。
それは、故人が生前にマイナンバーを届け出て付番していた口座しか照会できないという点です。
つまり、次のようなケースでは照会結果に出てきません。
● マイナンバーを銀行に届け出ていなかった
● 古い口座で付番手続きをしていなかった
● ネット銀行の口座を付番していなかった
制度の名前だけ聞くと「全国の口座が全部分かる」と思いがちですが、実際には付番されていない口座は一切表示されないため、照会結果だけで「口座がない」と判断することはできないことには注意が必要です。
申込方法と必要書類
申込は、預金保険機構から委託を受けた金融機関の窓口で行います。故人が取引していた銀行でなくても申込できます。
必要書類の中心は次のとおりです。
● 被相続人の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本
● 相続人であることを証明する戸籍
● 申込者の本人確認書類
● 金融機関所定の申込書
法定相続情報一覧図があれば、戸籍一式の代わりに提出できるため、手続きがスムーズになります。
手数料と結果が届くまでの期間
手数料は1件あたり5,060円(税込)で、申込時に支払います。
結果は約1か月後に、転送不要の簡易書留で届きます。
注意したいのは、該当口座がなかった場合でも手数料は返金されないという点です。照会結果が「該当なし」でも費用は戻らないため、申込前に他の手がかり調査と併用することが大切です。
制度を使う前に必ず確認したい点
相続時預貯金口座照会制度は便利ですが、使う前に押さえておきたい注意点があります。
● 口座が凍結される可能性がある
照会を申し込むと、金融機関が故人の死亡を把握するため、口座が凍結されることがあります。公共料金や施設利用料などの引き落としがある場合は、事前に支払方法を変更しておくと安心です。
● 住所表記の揺れに注意
住民票の住所と申込書の住所が一致しないと、マイナンバーが取得できず「該当なし」と通知されることがあります。住所は住民票の表記を正確に書き写すことが重要です。
● 死亡から10年以内しか利用できない
制度の利用期限は「死亡から10年以内」です。古い相続では利用できないため、早めの財産調査が必要です。
制度を使うべきケースと、使わなくてもよいケース
制度は万能ではないため、使うべき場面とそうでない場面があります。
● 制度を使うべきケース
・通帳やキャッシュカードが見つからない
・ネット銀行を使っていた可能性がある
・複数の銀行を利用していた可能性がある
・相続税申告が必要で、漏れが許されない
● 制度を使わなくてもよいケース
・通帳がすべて揃っている
・故人が利用していた銀行が明確
・口座数が少なく、調査が容易
制度は「調査の補助」であり、すべての口座が必ず見つかるわけではありません。照会結果と、通帳・郵便物・引き落とし履歴などの手がかりを組み合わせて調査することが大切です。
便利な制度だが、限界も理解して使うことが大切
相続時預貯金口座照会制度は、故人名義の口座を一括で確認できる便利な制度です。ネット銀行や通帳レス口座が増えている現代では、財産調査の負担を大きく減らしてくれます。
一方で、マイナンバー付番済み口座しか照会できない、残高は分からない、手数料が返金されないなどの制約もあります。制度の特徴を正しく理解し、他の調査方法と組み合わせて活用することが大切です。
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