2026/08/06
家督相続|今も意味はあるの?
2026/08/06
家督相続|今も意味はあるの?
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
相続のご相談を受けていると、「長男が家督を継ぐべきだと思う」「昔は家督相続だったから、長男が多く相続するのが普通では?」「家督相続という制度は今もあるのですか?」といった質問をいただくことがあります。
先にお話しすると、家督相続という制度はすでに廃止されており、現代の法律には存在しません。しかし、制度がなくなった現在でも「家督」という言葉は根強く残っており、相続の場面で家族の考え方や価値観に影響を与えることがあります。
今回は、家督相続の歴史、現代の法律との違い、そして今でも相談が多い理由などについてお話しします。
家督相続とは何か
家督相続とは、戦前の旧民法で定められていた相続制度で、家の財産や地位を家督(家の代表者)となる者が一括して引き継ぐ仕組みです。
家制度のもとでは、家は一つの単位として扱われ、家督を継ぐ者が家の財産・権利・義務をまとめて承継しました。
家督を継ぐのは、原則として長男。長男が家を継ぎ、他の兄弟は家を出て独立するという考え方が一般的で、財産も家督相続人がほぼすべてを引き継ぐという仕組みをとっていました。
この制度は、家を存続させるための仕組みとして機能していましたが、個人の権利が制限されるなどの問題も多く、戦後の民法改正で廃止となりました。
家督相続は現在の法律では完全に廃止されている
家督相続は、昭和22年(1947年)の民法改正で廃止されました。
現在の民法では、相続は個人単位で行われ、相続人全員が法定相続分に応じて財産を承継します。
長男だから多く相続する、家を継ぐ者がすべての財産を引き継ぐ、といったルールは法律上存在しません。
現代の相続は、次のような仕組みで行われます。
・相続人全員が法定相続分を持つ
・遺産分割協議で分け方を話し合う
・長男・長女などの区別はない
・家督という概念は法律上存在しない
家督相続は歴史的な制度であり、現代の相続とはまったく別の仕組みというわけです。
それでも「家督」という言葉が残り続ける理由
家督相続が廃止されてから70年以上が経ちますが、今でも「家督」という言葉は相続の場面で頻繁に使われます。
その理由は、法律ではなく家族の価値観や地域の慣習にあります。
特に地方では、「長男が家を継ぐべき」「墓守は長男がするもの」「家の土地は長男が引き継ぐべき」という考え方が根強く残っています。これは法律ではなく、家族の中で受け継がれてきた価値観です。
また、農地や山林など、家の財産が代々引き継がれてきた場合、「家督」という言葉が自然と使われることがあります。家の財産を守るという意識が強いほど、家督という概念が残りやすい傾向があります。
現代の相続で「家督」という言葉が問題になる場面
家督という言葉は、家族の価値観として使われることが多い一方で、相続の場面では誤解やトラブルの原因になることがあります。
例えば、長男が「家督だから財産は自分が多くもらうべきだ」と主張するケースがあります。しかし、現代の法律では長男が優先されることはなく、他の兄弟と同じ法定相続分を持ちます。このように、家督という言葉が法律と混同されると、遺産分割協議が難航することがあります。
また、親が生前に「家督は長男に継がせる」と言っていた場合でも、遺言書がなければ法律上の効力はありません。家族の価値観と法律の仕組みが一致しないことが、相続の場面で混乱を生む原因になります。
家督相続時代の登記の放置は要注意
家督相続という制度は廃止されていますが、戦前の家督相続時代の登記がそのまま残っている不動産は、今でも全国に数多く存在します。
特に農地・山林・古い宅地などは、家督相続が行われていた時代の名義のまま何十年も変更されていないケースが珍しくありません。
こうした不動産を相続する場合、現代の法律に基づいて手続きを進めることになりますが、登記簿の名義が古いままの場合は、まず「家督相続が行われた当時の名義人が誰なのか」を確認する必要があります。
家督相続は制度としては廃止されていますが、当時の名義が残っている以上、現在の相続登記はその名義人を起点に進めるしかありません。
問題は、家督相続時代の名義人がすでに亡くなっており、その後の相続が何世代も放置されているケースです。
昭和22年5月3日以前に生じていた相続に関しては、当時の法令(家督相続)が適用されるため、不動産を含む財産は家督相続した人がひとりで相続することになります。
現代と異なり遺産分割協議は不要ですが、こうした場合、相続登記を行うためには、家督相続時代の名義人から現在の相続人までの全ての相続関係を遡って証明する必要があるため、戸籍の収集が非常に複雑になります。
特に、家督相続時代の戸籍は、記載内容も現在の戸籍とは大きく異なります。また家督相続人が誰だったのか、家族構成がどうだったのかを読み解くには、専門的な知識が必要になることもあります。
さらに、家督相続時代の名義人の子や孫がすでに亡くなっている場合は、相続人が枝分かれし、人数が非常に多くなることがあります。相続人が全国に散らばっているケースも多く、連絡や同意を得るだけでも大きな負担になります。
家督相続という制度自体は廃止されていても、「家督相続が行われた時代の登記が残っている」という事実は、現代の相続登記に直接影響するということです。登記名義が古いまま放置されている不動産は、相続登記義務化の流れの中で、早めに整理しておくことがとても重要です。
現代における“家督”の意味
現代の法律では家督相続は存在しませんが、「家督」という言葉は、家族の中で次のような意味で使われることがあります。
・家の財産を守る役割
・墓や仏壇を管理する役割
・家族の中心としての責任
・親の介護や看取りを担う立場
家督という言葉は、法律上の制度ではなく、家族の中での役割や責任を表す言葉として残っているのです。
このような役割は、法律で決まっているわけではありませんが、家族の中で自然と受け継がれていくことがあります。相続の場面では、こうした家族の価値観を尊重しつつ、法律に基づいて公平に話し合うことが大切です。
家督は“制度”ではなく“家族の価値観”として残っている
家督相続は戦前の制度であり、現代の法律では完全に廃止されています。しかし、家督という言葉は、家族の価値観や地域の慣習として今も残っており、相続の場面で影響を与えることがあります。
相続では、法律と家族の価値観が一致しないことが多いため、丁寧な話し合いが欠かせません。
行政書士法人エニシアでは、家族の思いを尊重しながら、遺産分割をサポートしています。
「古い家督相続のときのままの不動産をどう扱えばよいか分からない」という段階からでも、遠慮なくご相談ください。
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