2026/08/19
賃借権の相続
2026/08/19
賃借権の相続
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
相続のご相談で意外と多いのが、「賃貸住宅に住んでいた親が亡くなった場合、部屋はどうすればいいのか?」というものです。
賃貸借契約は借主の死亡で自動的に終了すると思われがちですが、実は賃借権は相続財産として相続人に承継されるのが法律の原則です。
このため借主が亡くなっても契約は続き、相続人が賃料支払義務や原状回復義務を引き継ぐことになります。
この点を理解していないと、家賃の滞納や原状回復費用の負担など、思わぬトラブルにつながることがあります。
今回は、賃借権の相続の基本、相続人が取るべき選択肢、敷金の扱い、連帯保証の注意点などについてお話ししたいと思います。
賃借権は相続財産として承継される
民法では「相続人は被相続人の一切の権利義務を承継する」と定められています。
そして、賃借権は財産権の一種であるため、借主が亡くなっても契約は終了せず、相続人が賃借人の地位を引き継ぐというわけです。
このため、次のような誤解がよくあります。
・死亡したら自動的に契約終了 → 誤り
・大家の承諾が必要 → 不要
・名義変更料(承諾料)が必要 → 不要(賃借権は「当然に」相続されるため、大家が承諾料を請求することは認められません。)
同居していなくても相続される
賃借権の相続は、同居の有無とは関係がありません。
一人暮らしの親が借りていた部屋でも、遠方に住む子が相続することになります。
相続人は賃料支払義務や原状回復義務も承継するため、部屋を使わない場合でも放置すると家賃が発生し続けてしまいます。
相続人が複数いる場合は「準共有」
相続人が複数いる場合、賃借権は相続人全員のが共有している状態になります(準共有といいます)。
そして、準共有になると、次のような扱いになります。
・賃料支払義務は相続分に応じて分割承継
・しかし賃貸人は誰に対しても賃料全額を請求できる(負担は相続人同士で清算)
・契約解除の意思表示は原則として相続人全員に必要
実際には、相続人の代表者を決めて大家さんと連絡を取るのが一般的です。
敷金返還請求権も相続される
敷金は賃貸借契約に基づく債務を担保するためのお金であるため、その返還請求権も相続財産として相続人に承継されます。
敷金の返還は次の流れで行われます。
・賃貸借契約が終了
・物件の明渡し完了
・未払賃料や原状回復費を控除
・残額を相続人に返還
借主が亡くなった後に相続人が行うべき手続き
賃貸住宅の借主が亡くなった場合、相続人は次の流れで対応していくことになります。
① 貸主(大家さん)・管理会社へ連絡
② 契約内容の確認(賃料・解約予告期間・保証人など)
③ 契約を継続するか解約するか判断
④ 解約する場合は予告期間に従って申入れ
⑤ 残置物の搬出・原状回復
⑥ 敷金の精算
ここで特に注意したいのは、相続放棄を検討している場合です。
家財を持ち帰ったり、家賃を支払ったりすると「相続を承認した」とみなされ、相続放棄できなくなる可能性がありるため慎重になる必要があります。
連帯保証人についての注意点
賃貸借契約には連帯保証人が付いていることが多く、借主の死亡時には次の点を整理する必要があります。
借主が死亡した場合、保証人が負担する債務額(元本)が確定するのですが、亡くなった被相続人が連帯保証人であった場合、その時点までの保証債務を相続人が承継する可能性がでてきます。
また、相続人自身が保証人だった場合、亡くなった方の財産について相続放棄をしても保証責任は消えない、という落とし穴があります。
このように保証契約は相続と別の法律関係であるため、慎重な確認が必要です。
内縁配偶者・同居人の扱い
内縁配偶者は法律上の相続人ではないため、賃借権を相続することはできません。
ただし、判例により次のような保護が認められています。
・相続人がいない場合、内縁配偶者は借家権を援用して居住継続できる
・相続人がいる場合でも、相続人の借家権を援用して明渡し請求に対抗できる場合がある
なお、相続人が明渡しを求めた場合、権利濫用と判断されるかどうかは個別事情によることになるため、こうした事情がある場合には、必要に応じて弁護士と相談することも検討しましょう。
公営住宅は例外的に相続できない場合がある
公営住宅は低所得者向けの制度であるため、賃借人が死亡した場合でも賃借権が自動的に相続されるわけではありません。
自治体が入居資格を再審査し、改めて入居者を決定する仕組みが採用されています。
賃借権は「相続される」ことを前提に早めの対応を
賃借権は相続財産として承継され、借主の死亡で自動的に終了することはありません。
相続人は賃料支払義務や原状回復義務を負うため、契約を継続するか解約するかを早めに判断する必要があります。
行政書士法人エニシアでは、賃借権の相続に備えた死後事務委任契約書の作成など状況に合わせた生前対策を丁寧にサポートしています。
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