2026/06/10
秘密証書遺言 -あまり使われない理由-
2026/06/10
秘密証書遺言 -あまり使われない理由-
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
遺言書にはいくつかの種類がありますが、その中でも「秘密証書遺言(ひみつしょうしょゆいごん)」は、制度としては昔から存在するものの、実務ではほとんど使われていません。
「内容を秘密にできる」という特徴は魅力的に見えますが、実際にはデメリットが大きく、選ばれにくい方式です。
今回は、秘密証書遺言がなぜ使われないのか、その理由を中心に、実際の手続きの視点からわかりやすくお話しします。
秘密証書遺言とは?
秘密証書遺言とは、遺言書の内容を誰にも見せずに作成し、封筒に入れて封印したうえで、公証役場で「これは遺言書です」と認証してもらう方式です。
・内容は秘密のまま
・遺言書の存在だけ公証役場が証明してくれる
一見すると便利な制度ですが、実際の現場ではほとんど選ばれていません。
秘密証書遺言が使われない最大の理由
① 内容の不備があっても誰もチェックしてくれない
秘密証書遺言は、公証人が内容を確認しません。
そのため、
・文言の不備
・署名の欠落
・押印の不備
・財産の特定が不十分
といった形式不備で無効になるリスクが非常に高いのです。
後になって「せっかく作ったのに無効だった」というケースが多く、これが利用が敬遠される最大の理由です。
② 結局「検認」が必要で手続きが遅い
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同じく家庭裁判所の検認が必要です。
検認には数週間〜数ヶ月かかることもあり、その間は遺産の分配が進みません。
公正証書遺言なら検認が不要で、すぐに手続きに入れるため、多くの方に公正証書遺言が選ばれています。
また、自筆証書遺言の場合も、法務局での保管制度を利用することで家庭裁判所の検認を不要にできるようになりました。
このため、あえて秘密証書遺言を選択することのメリットは感じにくいと言えるでしょう。
③ 公証役場での手続きが必要なのに、内容はチェックされない
秘密証書遺言は、内容は秘密のままですが、作成手続きは公証役場で行います。
つまり、
・公証役場へ行く手間はある
・証人2名も必要
・費用もかかる
・でも内容は誰も確認してくれない
という「手間と費用だけかかって、安心感は得られない」方式になってしまっています。
このアンバランスさが、実際の手続きの現場で選ばれない大きな理由です。
④ 遺言書が無効になっても誰も気づかない
秘密証書遺言は封印されているため、遺言者が生きている間は誰も内容を確認できません。
そのため、
・本人は「遺言を残したつもり」
・家族は「遺言があると思っている」
・開封してみたら無効だった
という最悪の事態が起こり得ます。
遺言書は「確実に効力がある」ことが最も重要であり、秘密証書遺言はその点で大きな不安が残ります。
⑤ 公正証書遺言のほうが圧倒的に安心で便利
秘密証書遺言が使われない背景には、公正証書遺言の圧倒的な安心感があります。
公正証書遺言は、
・公証人が内容をチェック
・検認が不要
・原本が公証役場で保管される
・すぐに相続手続きに入れる
というメリットがあり、実務では多くの方が公正証書遺言を選びます。
「何が何でも内容を秘密にしたい」という特別な事情がない限り、秘密証書遺言を選ぶ理由がほとんどありません。
秘密証書遺言が向いているのはどんな人?
秘密証書遺言は、次のような方に限って有効です。
・どうしても内容を誰にも見られたくない
・遺言書の存在だけは公的に証明しておきたい
・パソコンで遺言書を作りたい
ただし、内容の不備による無効リスクが大きいため、行政書士や弁護士などの専門家に事前チェックを必ずしてもらうようにしましょう。
秘密証書遺言は、内容を秘密にできるというメリットがある一方で、
・内容の不備を誰もチェックしてくれない
・検認が必要で手続きが遅い
・手間と費用がかかるのに安心感がない
・無効になっても気づけない
という大きなデメリットがあります。
そのため、実務では公正証書遺言や自筆証書遺言(法務局での保管制度を利用)が圧倒的に選ばれているのが現状です。
「どの遺言方式が自分に合っているのか」は、ご家族の状況や財産の内容によって変わります。
行政書士法人エニシアでは、遺言書の種類選びから作成サポートまで、ご家族に合わせて丁寧にお手伝いしています。
どの方式で作るのが良いか迷っている方は、ぜひご相談ください。
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