2026/08/24
相続では「処分行為」に注意
2026/08/24
相続では「処分行為」に注意
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
相続の仕事をしていると、「相続放棄を考えている」という人とも多く出会います。特に、親に借金がある(またはその可能性がある)場合や、遺産を引き継ぎたくない事情がある場合に、相続放棄を検討する方が多いように思います。
しかし、相続放棄をする前に『相続財産の処分行為』をしてしまうと、法律上「相続を承認した(単純承認)」とみなされ、相続放棄ができなくなるということはあまり知られていません。
今回は、処分行為の具体例、保存行為との違い、グレーゾーンの判断などについてお話ししたいと思います。
処分行為とは?
処分行為とは、簡単に言えば「所有者のように相続財産を扱う行為」のことです。
財産を減らす行為だけでなく、財産の性質を変えたり、権利関係を動かす行為もこの中には含まれます。
民法921条1号では、相続人が相続財産の全部または一部を処分した場合、相続放棄ができなくなると定められています。
つまり、相続放棄を検討している段階では、財産に手をつけること自体が非常に危険なことなのです。
処分行為に該当する典型例
処分行為に該当する行為は幅広く、次のようなものが典型例です。
預貯金を引き出して使う
・生活費に使う
・第三者に贈与する
・自分の口座に移す
相続財産を売却・解体する
・不動産を売却する
・建物を解体する
・株式を売却する
相続財産を誰かに譲渡する
・車を売る・譲る
・価値のある遺品を配る
契約関係を変更する
・賃貸借契約を解約する
・契約上の地位を他人に移す
これらは「財産の現状を変える行為」であり、単純承認とみなされる可能性が高い行為です。
保存行為との違い
処分行為と対になる概念に「保存行為」というものがあります。
保存行為とは、財産を守るために必要な最小限の行為であり、この保存行為は処分行為とは異なり、行為をしても相続放棄をすることを妨げないとされています。
保存行為の例:
・雨漏りを防ぐための応急修理
・台風で壊れた屋根の最低限の補修
・建物の倒壊を防ぐための緊急措置
・時効を防ぐための債権の催告(請求)
ただし、保存行為は「必要最小限」であることが重要です。
応急的な修理を超えて、大規模な修繕やリフォームをするようなこは処分行為と判断される可能性があります。
グレーゾーンの行為と判断基準
処分行為か保存行為か判断が難しいケースも多く、次のような基準が重視された裁判例があります。
・その行為はどういう目的でされたか(財産保全か、自分の利益か)
・金額の規模(社会通念からみて高額か)
・行為後の処理(不足分を自己負担しているか)
・相続開始(被相続人が亡くなったこと)を知っててしたことかどうか
例えば、葬儀費用を遺産から支払う行為は、一般的な範囲であれば処分行為に当たらないと判断された裁判例があります。
一方で、価値の高い遺品を大量に持ち帰る行為は処分行為と判断された例もあります。
相続放棄を検討しているときに「絶対にやってはいけない行為」
次の行為は、相続放棄を妨げる可能性が非常に高いため、絶対に避けるべきです。
・預貯金の引き出し・解約
・不動産の売却・解体
・車の売却
・賃貸借契約の解約
・高価な遺品の形見分け
・相続財産から借金を返済する
特に「預金の引き出し」は、少額でも処分行為と判断される可能性があるため、絶対に手をつけてはいけません。
相続放棄を検討しているときの安全な対処法
相続放棄を考えている場合、次のように行動するのが安全です。
① 何もしないのが最も安全
財産に触れない、契約を動かさない、引き出さない。
② やむを得ず行う場合は「保存行為」に限定する
・緊急の修繕
・最低限の保全措置
・時効防止の催告
③ 行為の記録を残す
・領収書
・写真
・行為の理由をメモ
④ 相続放棄の申述を早めに行う
相続開始を知った日から3か月以内。
⑤ 少しでも迷ったら専門家に相談する
処分行為かどうかの判断は非常に難しく、裁判例でも結論が分かれることがあります。
「相続放棄したいなら、財産に触れない」が鉄則
相続の処分行為は、相続放棄を妨げる非常に重要な概念です。
財産を減らす行為だけでなく、性質を変える行為、権利関係を動かす行為も処分行為に該当します。
相続放棄を検討している場合は、財産に触れず、必要最小限の保存行為にとどめることが重要です。迷った場合は、必ず弁護士や司法書士などの専門家に相談するようにしましょう。














