2026/07/09
自筆遺言、どんな紙でもいいの?
2026/07/09
自筆遺言、どんな紙でもいいの?
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
自筆の遺言のご相談の際、
「遺言を自分で書いてみたいけれど、使う紙って何でもいいの?」
「エンピツでも大丈夫?」
そんなご質問をよくいただきます。
先にお伝えすると、法律上は紙やペンの種類に厳密な決まりはありません。
しかし、現場目線では「どんな紙でもいい」と言い切るのは危険です。
紙や筆記具の選び方ひとつで、遺言の有効性や読みやすさ、改ざんのリスクなどが大きく変わるからです。
今回は、自筆遺言を書くときに注意すべき紙と筆記具のポイントについてお話しします。
自筆遺言の基本ルール:本文・日付・氏名の自書
民法968条では、自筆遺言(自筆証書遺言)を有効にするために、本文・日付・氏名を遺言者本人が自筆で書くことを求めています。
つまり、パソコンやワープロで印刷したもの、他人が代筆したものは無効です。
筆記具や紙の種類は自由ですが、「自分の手で書いた」ことが確認できる状態でなければなりません。
紙の種類:法律上は自由、でも「適した紙」はある
法律上は便せんでもノートでもコピー用紙でもチラシの裏でも構いません。
ただし、長期保存と読みやすさを考えると、次のような紙が望ましいです。
推奨される紙
・A4サイズの普通紙・上質紙(白または淡いクリーム色)
・厚みのある紙(コピー用紙より少し厚め程度まで)
避けたほうがよい紙
・厚みの薄い便せんやメモ用紙(破れやすく裏写りしやすいもの)
・感熱紙(レシートなど、時間が経つと文字が消えるもの)
法務局に保管する場合の紙のルール
なお、法務局の「自筆証書遺言保管制度」を利用する場合、用紙には次のような形式が求められます。
・A4サイズ
・上側5mm、下側10mm、左側20mm、右側5mmの余白
・片面のみに内容を記載する
・ページ番号を記載(複数ページの場合)
・ホッチキスや糊付けは不可
便せんなど小さい紙でも法的には有効ですが、保管制度を利用したいならA4で書き直す必要があります。
筆記具の選び方:「消えない」「にじまない」「読みやすい」が大事
筆記具も法律上の制限はありませんが、「消えないこと」「読みやすいこと」が最重要です。
推奨される筆記具
◎油性ボールペン(にじみにくく長期保存に強い)
〇万年筆(筆跡が残りやすく、本人確認にも有利)
避けるべき筆記具
△水性ペン、ゲルインク(時間が経つとにじみやすい)
×鉛筆、シャープペンシル(消せるため改ざんの疑いが生じる)
×消えるボールペン(フリクションなど、熱で文字が消える)
×蛍光ペン・色ペン(薄く不鮮明になりやすい)
紙と筆記具の選び方が「遺言の信頼性」を左右する
遺言は、書いた本人の意思を後世に伝える唯一の手段です。
そのため、「読める」「残る」「疑われない」という三つの条件を満たすことが大切です。
インクが薄くて読めない、紙が劣化したり破れたりして一部欠けている。
こうした状態では、家庭裁判所の検認時に「真正な遺言かどうか」が疑われることがあり、実際に「無効の可能性がある」と判断されるケースも少なくありません。
財産目録を添付する場合の紙と筆記具
自筆証書遺言でも財産内容をまとめた財産目録はパソコンで作成しても構わないことになりました。ただし、全ページに署名・押印が必要になるので、本文と同様、用紙と筆記具についても「読める」「残る」「疑われない」が重要です。
「どんな紙でもいい」は本当。でも“どんな紙か”が大切
自筆遺言は、紙とペンさえあれば誰でも作れます。
しかし、「”トラブルにならないように”有効に残す」ためには、紙と筆記具の選び方がとても重要です。
紙は長期保存に耐えるものを選び、筆記具は消えないインクを使う。こうした一つひとつの積み重ねが、遺言の信頼性を高め、相続人同士のトラブルを防ぐことにつながります。
行政書士法人エニシアでは、自筆遺言の書き方のご相談だけでなく、紙や筆記具の選び方についても親身にサポートしています。
「とにかく何でもいいから大丈夫」と思っている方にこそ、ぜひ一度立ち止まって残される方のことをよく考えてみて欲しいと思います。
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