2025/11/27
スタッフBlog|遺言をのこす理由
2025/11/27
スタッフBlog|遺言をのこす理由
こんにちは。行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
私は日頃、故人の相続人の方からの依頼で遺産分割協議書を作成したり、相続人の方に代わって遺産を整理したりする業務、また、まだ相続が始まる前に遺言などの生前対策をサポートする業務を中心に仕事をしています。
さて、唐突ですが質問です。
「なぜ、遺言をのこすのでしょうか。」
今回は遺言を遺すその理由にフォーカスしてお話ししてみたいと思います。
① 遺言とは
まず、遺言とは何でしょうか。
遺言は、遺言者が生前に意思表示をしておくことで、遺言者が亡くなると同時に、その意思どおりの効力を発生させ、遺言者の最後の意思を実現するための制度です。
遺言がある場合は、原則として遺言にしたがって遺言者の財産の帰属先が決まります。また、遺言者が遺産分割の方法を遺言により指定すると、相続人はその遺言の内容に沿った分割を行うことが法的に必要になります。
※例外として、相続人が全員で合意すれば、遺言と異なる遺産分割協議を成立させることも可能です。
つまり、遺言は「亡くなった後の自分の意思を、確実に家族へ伝えるための手段」と言えるでしょう。
② 理由(その1) ― 争族を避けたい
遺産分割の紛争のことを、俗に「争族(そうぞく)」と呼ぶことがあります。財産の多い少ないにかかわらず、相続をめぐる争いは起こり得ます。
例えば、故人の意思が不明確なまま残された場合、相続人同士が「きっとこう考えていたに違いない」とそれぞれの推測を持ち寄ります。しかし、その推測には利害関係が絡み、意見がぶつかり合ってしまうのです。
実際のケースでも、財産が数百万円程度の預金だけであっても、兄弟姉妹の間で「誰がどれだけ世話をしたか」「誰が生活に困っているか」といった感情が絡み、話し合いが長期化するということがありました。
遺言があれば、故人の意思が明確に示されるため、こうした争いを回避する強力な助けになります。亡くなった方が「この財産は長男に」「この土地は妻に」と意思を残していれば、相続人としてはそれを尊重したくなるものです。結果として、家族の関係を守ることにつながるのです。
③ 理由(その2) ― 遺産相続の手続をスムーズに
遺言がない場合、故人の法定相続人が、受け取った財産をどのように分割するかについて、全員で話し合い(遺産分割協議)をして決めなければなりません。
預貯金だけなら比較的分けやすいですが、不動産が含まれると話は複雑です。土地や建物は分割が難しく、誰が住むのか、売却するのか、賃貸に出すのかなど、決めるべきことが多くなります。その結果、協議がなかなかまとまらず、相続手続きが長期化するケースも少なくありません。
さらに、相続人の中に音信不通の方や認知症の方がいる場合、家庭裁判所での手続きが必要になります。これには時間も費用もかかり、残された家族の負担は大きくなります。
遺言であらかじめ分割内容を決めておけば、こうした協議を省略でき、相続人の負担を大幅に軽減できます。特に不動産を含む相続では、遺言の有無が手続きのスピードを大きく左右します。
④ その他の理由 ― 税務や事業承継との関係
ここまで「争族を避ける」「手続きをスムーズにする」という二つの理由を挙げましたが、遺言を残す理由はそれだけではありません。
例えば、相続税の節税対策です。遺言によって財産の分け方を工夫する(あらかじめ決めておく)ことが、スムーズな税務申告の助けとなり、結果として相続税の負担を軽減できる場合があります。特にすべての財産の中でも金額的に大きくなりやすい不動産を複数お持ちの方などは、遺言も活用しながら次世代への承継を計画的に進めることが重要です。
また、事業を営んでいる方にとっては「事業承継」の観点も大切です。後継者を誰にするのか、株式や事業用資産をどう分けるのかを遺言で明確にしておくことで、会社や店舗の存続をスムーズに進めることができます。
⑤ 親心をカタチに
遺言を残す理由をまとめると、最終的には「家族を想う気持ちを形にするため」と言えるでしょう。
争いを避けることも、手続きをスムーズにすることも、税務や事業承継を考えることも、すべては残された家族の安心のためです。遺言は単なる法律文書ではなく、親心を形にする大切な手段なのです。
「自分が亡くなった後、家族が困らないように」「安心して生活を続けられるように」――そんな思いを遺言に込めることで、家族にとってかけがえのない贈り物になります。
あなたは、なぜ遺言を書くのですか
遺言は、亡くなった後の財産の分け方を決めるだけのものではありません。
- 家族の争いを防ぐ
- 手続きをスムーズにする
- 税務や事業承継を円滑にする
こうした役割を果たしながら、最終的には「家族への思いやり」を形にするものです。
「まだ元気だから必要ない」と思う方も多いですが、遺言は元気なうちにこそ準備しておくべきものです。いざという時に備えて、ぜひ一度考えてみてください。














