2026/02/18
シリーズ「遺贈」 第2回
2026/02/18
シリーズ「遺贈」 第2回
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
シリーズ「遺贈」第2回をお送りします。
前回は、「遺贈とは何か」「相続や贈与とどう違うのか」という全体像をお話ししました。
今回はもう一歩、
・包括遺贈
・特定遺贈
・負担付遺贈
といった「遺贈の種類」と、その実際のイメージ・注意点について、踏み込んで解説していきます。
同じ「遺贈」という言葉でも、
・財産の全部を対象にするのか
・一部だけを対象にするのか
・何か条件や負担をつけるのか
によって、意味合いも手続きも大きく変わってきます。
この違いを知らないまま遺言を書くと、
・相続人同士が解釈で揉める
・受け取る側が困ってしまう
・手続きが複雑になってしまう
といったトラブルにつながることもあります。
「遺贈の種類」を知っておくことは、“想いがきちんと届く遺言”を書くための大事なステップです。
包括遺贈とは?
まずは「包括遺贈(ほうかついぞう)」から見ていきましょう。
包括遺贈とは、
「財産の全部、または一定の割合をまとめて遺贈すること」
をいいます。
たとえば、遺言の中で、
「私の財産の全部を、長女Aに遺贈する。」
「私の財産の2分の1を、妻Bに遺贈する。」
といった書き方をした場合、それは包括遺贈になります。
この場合、受け取る側(受遺者)は、相続人にかなり近い立場になります。
なぜなら、
・プラスの財産だけでなく、マイナスの財産(借金)も引き継ぐ可能性がある
・遺産分割協議に参加する権利がある
といった特徴があるからです。
つまり、包括遺贈は、
「相続人ではない人を、相続人に近い立場として扱う」
ようなイメージに近い制度です。
そのため、
・子どもがいないご夫婦で、配偶者にすべてを託したいとき
・特定の人に、全体の一定割合を渡したいとき
などに利用されることがよくあります。
ただし、借金などの負債も含めて「全体」を引き継ぐ可能性があるため、受け取る側にとっては慎重な判断が必要になります。
特定遺贈とは?
次に、「特定遺贈(とくていいぞう)」です。
特定遺贈とは、
「特定の財産を、特定の人に遺贈すること」
をいいます。
たとえば、
「札幌市〇〇区の自宅不動産を、長男Cに遺贈する。」
「〇〇銀行△△支店の預金のうち、300万円を、孫Dに遺贈する。」
といった書き方をした場合、それは特定遺贈です。
包括遺贈との違いは、
・財産の「全部」や「割合」ではなく
・特定の財産だけを切り出して渡す
という点です。
特定遺贈は、
・自宅はこの子に
・この預金はこの孫に
・この絵画はこの人に
といったように、「誰に何を渡すか」を細かく指定したいときに使われます。
受け取る側は、原則としてその財産だけを引き継ぎますので、包括遺贈のように「借金まで一緒に引き継ぐ」ということはありません。
一見すると、とても使いやすい制度に思えますが、実際は注意点も多くあります。
たとえば、
・遺言に書かれていた預金が、亡くなる時点では残っていなかった
・不動産の名義変更にあたって、他の相続人との調整が必要になった
といったケースです。
「書いておけばそのとおりにスムーズにいく」とは限らないのが、特定遺贈の難しいところでもあります。
負担付遺贈とは?
3つめが、「負担付遺贈(ふたんつきいぞう)」です。
負担付遺贈とは、
「ある義務や条件を負ってもらうことを前提に、財産を遺贈すること」
をいいます。
たとえば、
「自宅不動産を長男Eに遺贈する。その代わり、妻Fの生活費を負担すること。」
「アパートを長女Gに遺贈する。その代わり、墓の管理と法要を行うこと。」
といった形です。
財産を受け取る代わりに、
・誰かの生活を支える
・お墓や仏壇を守る
・特定の支出を負担する
といった「負担」を引き受けてもらうイメージです。
負担付遺贈は、
・残される配偶者の生活を守りたい
・お墓や仏壇をきちんと守ってほしい
・特定の目的のために財産を使ってほしい
といった「想い」や「条件」をセットで託したいときに使われます。
ただし、負担付遺贈は、
・負担の内容があいまいだとトラブルになりやすい
・受け取る側にとって重すぎる負担になってしまうことがある
といったリスクもあります。
そのため、
・負担の内容をできるだけ具体的に書く
・受け取る側の状況や気持ちもよく考える
といった配慮がとても大切になります。
不動産の遺贈で起きやすいトラブル
遺贈の中でも、特にトラブルになりやすいのが「不動産」に関する遺贈です。
たとえば、
「自宅不動産を長男に遺贈する。」
という遺言があった場合、
・他の相続人が「不公平だ」と感じる
・遺留分侵害額請求が起きる
・固定資産税や維持費の負担をめぐって揉める
といったことが起こり得ます。
また、
・アパートや貸家などの収益不動産を特定の人に遺贈した場合
・土地と建物の名義を分けて遺贈した場合
なども、後々の管理や売却の場面で複雑な問題が生じることがあります。
不動産は、
・価値が大きい
・分けにくい
・維持管理に手間と費用がかかる
という性質があるため、遺贈の設計には特に慎重さが求められます。
「この家はこの子に」「この土地はあの子に」といった気持ちはとてもよく分かるのですが、
・他の相続人とのバランス
・将来の売却や管理のしやすさ
といった視点も、ぜひ一緒に考えていただきたいポイントです。
受遺者は「受け取るかどうか」を選べる
ここで、受け取る側(受遺者)の立場からも少し見ておきましょう。
遺贈は、
「必ず受け取らなければならないもの」ではありません。
受遺者には、
・遺贈を「承認」する
・遺贈を「放棄」する
という選択肢があります。
特に、
・包括遺贈で借金も引き継ぐ可能性がある場合
・負担付遺贈で重い義務が課されている場合
などは、受け取るかどうかを慎重に判断する必要があります。
「せっかく遺言で残してくれたのだから、断るのは申し訳ない」と感じる方も多いのですが、
・自分の生活への影響
・将来の負担
を考えたうえで決めることが大切です。
遺贈を受ける側にとっても、専門家に一度相談してから判断する価値は十分にあります。
遺贈の「種類」を知る。想いを届ける第一歩
今回は、
・包括遺贈
・特定遺贈
・負担付遺贈
という3つの遺贈の種類についてお話ししました。
もう一度整理すると、
◆ 包括遺贈:財産の全部または割合をまとめて渡す(相続人に近い立場)
◆ 特定遺贈:特定の財産だけを切り出して渡す
◆ 負担付遺贈:条件や義務とセットで渡す
という違いがあります。
どの形を選ぶかによって、
・相続人同士のバランス
・受け取る側の負担
・将来の手続きのしやすさ
が大きく変わってきます。
遺贈は、「想い」を形にするための制度ですが、
想いだけで書いてしまうと、かえって家族を困らせてしまうこともある
という、少し繊細な側面も持っていますので慎重に。
次回の第3回では、
・遺贈のメリット・デメリット
・遺言書との関係
・家族信託との比較
といった「遺贈を実際にしたいときに知っておきたいポイント」を、お話ししていきます。
行政書士法人エニシアでは、遺言書の作成サポートや、遺贈・後見制度・家族信託などを組み合わせた生前対策のご相談を承っています。
「うちの場合はどの形の遺贈が合っているのか」「不動産をどう遺したらいいか迷っている」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
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