2026/01/13
【シリーズ|後見制度①】「後見制度」って?
2026/01/13
【シリーズ|後見制度①】「後見制度」って?
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
高齢化が進む日本では、認知症や障がいなどにより、財産管理や契約手続きが難しくなる方が増えています。
そのようなときに本人の権利を守り、生活を支える仕組みが「後見制度」です。
後見制度は、本人の生活を守るための大切な制度である一方、仕組みが複雑で、初めて接する方にはとても分かりづらいのが実情です。
そこで本シリーズでは、後見制度を3回に分けて丁寧に解説していきます。
第1回となる今回は、後見制度の全体像と、法定後見(成年後見・保佐・補助)の基本を、分かりやすくまとめたいと思います。
後見制度は「法定後見」と「任意後見」の2つに分かれる
後見制度は、大きく分けると次の2種類があります。
法定後見(家庭裁判所が後見人を選ぶ)
任意後見(本人が元気なうちに契約して後見人を選んでおく)
まずはこの2つの違いを押さえることが、制度理解の第一歩になります。
● 法定後見とは(すでに判断能力が低下している場合)
法定後見は、本人の判断能力がすでに低下している場合に利用する制度です。
家庭裁判所が後見人を選任し、本人の財産管理や生活支援を行います。
法定後見はさらに3つに分類されます。
● 任意後見とは(将来に備えて契約しておく制度)
任意後見は、本人が元気なうちに「この人に任せたい」と契約しておく制度です。
実際に後見が始まるのは、本人の判断能力が低下し、家庭裁判所が任意後見監督人を選任した後です。
任意後見は第2回で詳しく解説します。
法定後見の3つの種類
ここからは、今回の中心テーマである「法定後見」の3類型を詳しく見ていきます。
一般的な例も交えながら、できるだけイメージしやすいように説明します。
① 成年後見(判断能力がほとんどない場合)
認知症が進行している、重度の知的障がい・精神障がいがあるなど、日常生活の判断が難しい場合に利用されます。
成年後見人ができること
成年後見人は、本人の生活を守るために幅広い権限を持ちます。
•預貯金の管理
•年金・保険の手続き
•介護サービス契約
•施設入所契約
•医療費の支払い
•不動産の売却(家庭裁判所の許可が必要)
•生活費の支払い
•本人の財産を守るための「取消権」
特に「取消権」は重要で、本人が不利な契約をしてしまった場合に取り消すことができます。
詐欺的な訪問販売や高額な契約から本人を守るための大切な仕組みです。
よくあるケース
•認知症の親が銀行で手続きできなくなった
•施設入所の契約をしたいが、本人が理解できない
•不動産を売却して介護費用に充てたい
•本人が詐欺的な契約を繰り返してしまう
成年後見は「本人の生活を守るための最も強い支援」と言えます。
② 保佐(判断能力が著しく不十分な場合)
成年後見ほどではないものの、重要な契約を自分だけで判断するのが難しいケースです。
保佐人の同意が必要な行為
•借金
•不動産の売買
•保証人になる
•高額な契約
•相続の承認・放棄
•訴訟行為
本人の意思を尊重しつつ、必要な部分だけサポートする仕組みです。
よくあるケース
•認知症の初期で、日常生活はできるが契約は不安
•家族が本人の財産管理をサポートしたい
•本人が判断を誤りやすい場面が増えてきた
保佐は「本人の意思を大切にしながら、重要な部分だけ支える」制度と言えます。
③ 補助(判断能力が不十分な場合)
日常生活は自分でできるが、特定の行為だけサポートが必要なケースです。
補助の特徴
•本人の同意が必要
•補助人が関われる範囲は、本人が希望し家庭裁判所が認めた行為に限られる
•必要最小限の支援にとどめる
よくあるケース
•認知症のごく初期
•特定の契約だけ不安がある
•本人の意思を最大限尊重したい
補助は「必要な部分だけピンポイントで支援する」制度です。
法定後見の利用場面とメリット・デメリット
本人の生活を守るための大切な後見制度ですが、この制度も万能ではありません。
メリットと同時に、注意すべき点もあります。
● 法定後見のメリット
•法的な代理権が得られるため、銀行・不動産・施設契約などがスムーズ
•本人の財産が守られる
•親族間のトラブルを防ぎやすい
•専門職が選ばれる場合、適切な財産管理が期待できる
● 法定後見のデメリット(よく誤解されるポイント)
•一度始まると原則として終了しない(本人が亡くなるまで続く)
•家庭裁判所への報告義務がある
•専門職が選ばれた場合、報酬が発生する
•本人の自由が制限される場面がある
•家族が自由に財産を動かせなくなる
特に「一度始めたらやめられない」という点は、相談者の方が驚かれるポイントです。
後見人は誰がなるの?
法定後見の後見人(保佐人、補助人)は、家庭裁判所が選任します。
家族が選ばれることもありますが、近年は専門職(司法書士・弁護士・社会福祉士)が選ばれるケースも増えています。
専門職が選ばれやすいケース
•財産額が多い
•親族間の対立がある
•不正防止の観点から専門職が望ましい
•不動産の売却など複雑な手続きが必要
家族が選ばれやすいケース
•家族関係が良好
•財産が多くない
•日常的に本人を支えている
法定後見の利用(申立て・選任)の流れ
最後に、法定後見の制度を利用する場合の流れを簡単にみてみましょう。
1.家庭裁判所へ申立て
2.医師の診断書の提出
3.裁判所の調査(面談など)
4.後見人の選任
5.後見開始
6.後見人による財産管理・生活支援
7.家庭裁判所への定期報告
※申立てから開始までの期間は、一般的に1~3か月程度です。
後見制度の全体像と、法定後見(成年後見・保佐・補助)の基本をご紹介しました。
今回は、ここまで。
次の第2回では、「任意後見」について詳しくお話しいたします。














