2026/10/08
葬儀費用と相続
2026/10/08
葬儀費用と相続
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
ご家族が亡くなった直後は、深い悲しみの中で葬儀の準備を進めなければならず、気持ちの整理が追いつかないまま大きな支出が発生します。そんな中で必ずといっていいほど出てくるのが、「葬儀費用は誰が払うの?」「遺産から出していいの?」という疑問です。
原則論からお話しすると、葬儀費用は法律上の相続債務ではありません。つまり、相続人が法定相続分に応じて自動的に負担する性質のものではなく、誰がどれだけ負担するかは相続人同士の話し合いで決める必要があります。
ただし、相続税の計算では「葬式費用」として一定の範囲が債務控除として認められます。
今回は、葬儀費用の負担者、どういう場合に遺産から支出できるか、相続放棄との関係などについてお話しします。
葬儀費用は相続債務ではない
葬儀費用は、被相続人の死亡後に発生する支出であり、相続開始時点に存在していた債務ではありません。そのため、法律上は相続債務に該当しません。
では誰が払うのかというと、法律の明確な規定はなく、判例や慣習に基づいて次のように整理されています。
・喪主が一時的に立て替えるのが一般的という考え方
・相続人が共同で負担するという考え方もある
・相続財産から支出すべきとする考え方(判例)もある
実際の場面では、喪主が立て替え、後から相続人間で精算するのが最も多いケースです。
遺産から葬儀費用を支出できるのか
葬儀費用を遺産から支出することは可能ですが、これには相続人全員の合意が必要です。
葬儀費用は相続債務ではないため、相続人の一部が反対している場合、遺産から支出することはできません。喪主が負担したままになることもあります。
そのため、葬儀費用の扱いは遺産分割協議と同じタイミングで早めに話し合い、合意形成しておくことが重要です。
相続放棄との関係
相続放棄を検討している場合、葬儀費用を遺産から支出すると「相続財産の処分」とみなされ、相続放棄ができなくなる可能性がある(単純承認したとされてしまう)ので注意が必要です。
ただし、実際の裁判例では、社会通念上相当な範囲の葬儀費用を遺産から支出する分には、単純承認には当たらないと判断されています。
とはいえ、「相当な範囲」の判断は難しいため慎重な対応が必要です。
葬儀費用は相続税で“債務控除”できる
葬儀費用は、相続税の計算では「葬式費用」として債務控除が認められます。
ただし、控除できるものとできないものが明確に区別されています。
控除できる葬儀費用(相続税法上の葬式費用)
・通夜、告別式の費用(式場、祭壇、棺など)
・火葬、埋葬、納骨の費用(火葬場使用料など)
・僧侶へのお布施、戒名料、読経料
・遺体搬送費(病院→自宅→葬儀場など)
・通夜振る舞いなどの飲食費(会葬者への接待)
・葬儀を手伝ってくれた方へのお礼
控除できない葬儀関連費用
・香典返しの費用
・仏壇、墓地、墓石の購入費
・法事の費用(初七日・四十九日・一周忌など)
控除の対象かどうかは「葬儀に直接必要な費用かどうか」が基準とされています。
葬儀費用で起こりやすいトラブル
葬儀費用は、次のような場面でトラブルになりやすいです。
・喪主だけが多額の費用を負担し、不公平感が生じる
・豪華な葬儀を希望する相続人と簡素な葬儀を希望する相続人が対立する
・香典の扱い(誰が受け取るか、返礼品の費用負担)が揉める
・領収書が残っておらず、精算の根拠が曖昧になる
こうしたトラブルを防ぐためには、葬儀費用の領収書・明細をすべて保管し、遺産分割協議で明確に取り決めることが重要です。














