2026/09/17
尊厳死宣言は、遺言でしてもいいの?
2026/09/17
尊厳死宣言は、遺言でしてもいいの?
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
終末期の医療について「延命治療は望まない」「自然な形で最期を迎えたい」という方が増えています。こうした意思を残す方法として知られているのが尊厳死宣言(リビングウィル)です。
そして、その話の中で、
「尊厳死宣言は遺言書に書いてもいいのですか?」
という声を耳にすることもあります。
尊厳死に関する意思を遺言書に書くこと自体は可能です。しかし、遺言書は“死後に効力が発生する書面”であるため、延命治療の判断が必要になるタイミングには間に合わないという致命的な問題があります。
今回は、尊厳死宣言と遺言書の用途の違い、どこに書くのが正しいのか、などについてお話ししたいと思います。
尊厳死宣言とは何か|延命治療を望まない意思を示す書面
尊厳死宣言は、回復の見込みがない終末期において、人工呼吸器や胃ろうなどの延命治療を望まないという意思を、判断能力があるうちに書面で示すものです。
苦痛を和らげる緩和ケアは希望するなど、本人の価値観を反映した内容になります。
日本には尊厳死を直接定める法律はありませんが、医療現場では本人の意思を尊重することが基本とされており、書面があることで家族や医療者が判断しやすくなります。
尊厳死宣言を遺言書に書くと“間に合わない”
遺言書は、遺言者が亡くなった後に開封され、効力が発生する書面です。
つまり、遺言書に「延命治療は望まない」と書いても、本人が延命治療を受けるかどうかを判断する場面では、まだ遺言書は開かれていません。
延命治療の判断は、本人が意識を失った直後や、緊急の医療判断が必要な場面で行われます。
遺言書が開封されるのはその後ですから、遺言書に尊厳死の希望を書いても、医療現場では使えない。
この点が、尊厳死宣言と遺言書とで決定的に違うところなのです。
尊厳死宣言は“生前に効力を持つ書面”であるべき
尊厳死宣言は、本人が意思表示できなくなった時点で効力を持つ必要があります。
そのため、遺言書ではなく、本人が生前に医療者へ提示できる形式で作成することが重要です。
尊厳死宣言は、私的な書面でも作成できますが、より確実に強い意思であることを伝えるためには公正証書(尊厳死宣言公正証書)が適しています。
公証人が本人の意思能力を確認したうえで作成するため、医療現場でも「本人の明確な意思」として扱われやすくなります。
尊厳死宣言は法的拘束力があるのか
尊厳死宣言には、医師を法的に拘束する強制力はありません。
日本には尊厳死を直接認める法律がないため、書面があっても医師が必ず従わなければならないわけではありません。
しかし、厚生労働省のガイドラインでは、終末期医療の判断は本人の意思を尊重し、家族と医療チームが話し合って決めることが基本とされています。
書面があることで、医療者が本人の意思を確認しやすくなり、尊重される可能性が高まります。
尊厳死宣言と遺言書を“セットで作る”メリット
尊厳死宣言は生前の医療に関する意思表示、遺言書は死後の財産に関する意思表示です。
目的は異なりますが、どちらも「家族の負担を減らす」という点で共通しています。
そのため、尊厳死宣言を作成するタイミングで、公正証書遺言も同時に作成する方が増えています。
公証役場での手続きを一度に済ませられるため、負担が少なく、内容の整合性も保ちやすくなるというメリットもあります。
尊厳死宣言を確実に機能させるためのポイント
尊厳死宣言は、作っただけでは十分ではなく、医療現場で実際に使われるためには、次の点が重要です。
まず、家族に内容を共有しておくことです。
書面があっても、家族が強く反対する場合、医療者は板挟みになり、書面通りの対応が難しくなることがあります。
なぜその意思を持っているのか、事前に話し合っておくことが大切です。
また、かかりつけ医にも共有しておくと、緊急時にスムーズに対応してもらえます。
なお、尊厳死宣言はいつでも撤回・変更できるため、体調や価値観の変化に応じて見直すことも考えるとよいでしょう。














