2026/09/09
相続して共有になった賃貸アパートと確定申告
2026/09/09
相続して共有になった賃貸アパートと確定申告
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
「親が亡くなり、賃貸アパートを兄弟で相続した」 「アパートの家賃は兄が管理しているけれど、確定申告はどうするの?」 「共有名義になったけれど、家賃収入を誰が申告すればいいの?」
こうした疑問は、賃貸不動産を相続した方からよく出る話しの一つです。
相続した賃貸アパートが共有になった場合、「家賃が振り込まれている人がまとめて確定申告すればいい」というわけではありません。
原則として、共有者それぞれが、自分の持分や相続分に応じて不動産所得を計算し、確定申告を行う必要があります。
さらに、遺産分割が終わる前と、遺産分割が成立した後では、家賃収入の扱いが変わるため注意が必要です。
今回は、相続して共有になった賃貸アパートについて、家賃収入の確定申告は誰がするのか、必要経費はどう分けるのか、遺産分割前と後で何が変わるのかなどについてお話しします。
相続した賃貸アパートの家賃収入は誰のもの?
まず押さえておきたいのが、賃貸アパートを相続したからといって、家賃収入を一人の相続人が自由に受け取ってよいわけではないという点です。
不動産を複数人で共有している場合、その不動産から生じる家賃収入も、原則としてそれぞれの共有持分に応じて帰属します。
例えば、父が所有していた賃貸アパートを、長男と次男が2分の1ずつ相続したとします。
年間の家賃収入が600万円、必要経費が200万円だった場合を例にごく簡単にいうと、
・不動産所得:600万円-200万円=400万円
・長男:400万円×1/2=200万円
・次男:400万円×1/2=200万円
という形で、それぞれの不動産所得を計算することになります。
家賃の振込先が兄一人でも、兄だけが申告するわけではない
相続した賃貸アパートでは、実際には、代表者一人の口座に家賃をまとめて振り込んでもらっているケースがほとんどだと思います。
例えば、兄がアパートの管理をしているため、入居者からの家賃をすべて兄の口座で受け取っているようなケースです。
しかし、こうした場合でも、「兄の口座に入金されたから、兄の不動産所得」と考えるのは誤りです。
誰の口座に家賃が振り込まれているかではなく、誰にその不動産所得が帰属するのか、という点が重要になるのです。
そのため、共有者がそれぞれの持分に応じて収入と必要経費を計算し、各自の確定申告に反映させる必要があります。
遺産分割が終わる前の家賃収入はどうする?
ここは、相続した賃貸アパートの確定申告で特に注意したいポイントです。
例えば、父が亡くなり、長男・次男・長女の3人が相続人になったとします。
まだ遺産分割協議がまとまっておらず、賃貸アパートを誰が相続するのか決まっていない場合、そのアパートは相続人の共有状態にあります。
この場合、遺産分割が成立するまでの家賃収入は、各相続人の法定相続分に応じて、それぞれに帰属することになります。
つまり、
・家賃を兄が管理している
・家賃が兄の口座に入っている
・兄がアパートの修繕や入居者対応をしている
という事情だけで、兄が家賃収入をすべて申告することにはなりません。
遺産分割が成立した後はどうなる?
では、遺産分割協議が成立し、長男が賃貸アパートを単独で相続することになった場合はどうでしょうか。
この場合、遺産分割が成立した後の家賃収入は、アパートを取得した長男に帰属することになります。
一方で注意したいのが、遺産分割が成立するまでの期間です。
「最終的に長男がアパートを相続したのだから、相続開始後の家賃も全部長男の所得として申告すればよい」と考えるのは適切ではありません。
つまり、「いつまでが共有状態だったのか」を整理することがとても重要になります。
必要経費も共有持分に応じて分ける
賃貸アパートの確定申告では、家賃収入だけでなく必要経費についても注意が必要です。
不動産所得は、基本的に「総収入金額-必要経費」で計算します。
賃貸アパートでは、例えば次のような費用が発生します。
・固定資産税・都市計画税
・建物の修繕費
・管理会社への管理費
・火災保険料などの保険料
・借入金の利息
・減価償却費
・賃貸経営に必要なその他の費用
これらについても、原則としてその不動産所得の帰属に応じて整理することになります。
特に、相続したアパートを兄が管理している場合、兄が立て替えた修繕費などについて、後から「これは誰の経費なのか」という問題が起きることがあります。
そのため、家賃収入だけでなく、領収書や管理費、固定資産税などの支出も共有者間で記録を残しておくことが非常に重要です。
相続した賃貸アパートの確定申告で準備しておきたいもの
相続後に賃貸アパートの確定申告をする場合、通常の確定申告に加えて、相続開始日や共有持分、管理状況などを確認する必要があります。
主な資料としては、
・賃貸借契約書
・家賃の入金が分かる通帳や明細
・管理会社からの収支報告書
・固定資産税・都市計画税の通知書
・修繕費などの領収書
・火災保険などの保険料の資料
・借入金がある場合は返済予定表など
・相続関係を確認できる資料
・遺産分割協議書
などを税理士との相談に備えて用意しておくとよいでしょう。
相続した年は「準確定申告」にも注意
賃貸アパートを相続した場合、相続人自身の確定申告だけでなく、亡くなった親の「準確定申告」が必要になるケースがあります。
準確定申告とは、亡くなった方の1月1日から死亡した日までの所得について、相続人が代わりに行う確定申告です。
例えば、父が賃貸アパートを経営していて、年の途中で亡くなった場合には、父が亡くなるまでの家賃収入について整理する必要があります。
その後は相続人側の所得として、相続開始後の家賃収入を整理していくことになります。
つまり、相続が発生した年は、
・亡くなった方の所得を整理する
・相続人の不動産所得を整理する
・共有状態なら各相続人に所得を振り分ける
・遺産分割成立後は取得者の所得として整理する
というように、通常の確定申告よりも複雑になります。
相続した賃貸アパートを共有にする前に考えたいこと
ここまで確定申告について説明しましたが、実はもっと重要なのが、「そもそもアパートを共有にするのか」という相続時の判断です。
共有にすると、相続直後は公平に分けられたように感じるかもしれません。
しかし、その後は毎年、
・家賃収入の管理
・必要経費の精算
・確定申告
・大規模修繕
・借入金の返済
・入居者や管理会社との対応
・将来の売却
などについて、共有者同士で調整する必要があります。
特に兄弟で共有した場合、最初は仲が良くても、時間が経つにつれて「誰が管理するのか」「修繕費を誰が負担するのか」「家賃はいくら残っているのか」などで意見が合わなくなることがあります。
そのため、相続した賃貸アパートは「相続できたら終わり」ではなく、その後の管理・申告・売却まで考えて分け方を決めることが重要です。
相続した賃貸アパートは「確定申告まで」が相続手続き
相続した賃貸アパートは、名義変更をしたら終わりではありません。
特に共有になった場合には、誰が家賃を管理しているのかではなく、誰に所得が帰属するのかを整理する必要があります。
また、遺産分割前と遺産分割後では家賃収入の扱いが異なり、相続した年には準確定申告なども関係する可能性があります。
さらに、共有状態をそのまま続けると、毎年の確定申告だけでなく、修繕や売却など将来的な問題にもつながることがあります。
そのため、相続した賃貸アパートについては、「誰が相続するのか」だけではなく、「その後誰が管理し、誰が申告し、最終的にどうするのか」まで考えておくことが大切です。
行政書士法人エニシアでは、相続人調査、遺産分割協議書の作成、司法書士と連携した相続登記、税理士と連携した相続不動産にかかわる確定申告まで、相続後の不動産問題を総合的にサポートしています。
相続した賃貸アパートの共有や、家賃収入、遺産分割についてお困りの方は、どうぞご相談ください。
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