2026/02/13
シリーズ「認知症と相続対策」第2回
2026/02/13
シリーズ「認知症と相続対策」第2回
こんにちは、行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
シリーズ「認知症と相続対策」の第2回です。
今回は、本人が認知症になった際に利用できる制度である「後見制度」について、できるだけ分かりやすくお話ししたいと思います。
認知症と財産管理の問題を語るうえで、後見制度のお話しは欠かせません。
しかし、制度が複雑で、ネット上の情報も断片的なため、誤解されている部分が非常に多いのが実情です。
行政書士として相談を受けていると、
「後見制度を使えば何でもできるんですよね?」
「家族が後見人になれば自由に管理できますよね?」
といった誤解が本当に多く、制度の特徴を正しく理解していないことで、後々困ってしまうケースが少なくありません。
そこで今回は、後見制度の全体像をしっかり整理し、どんな家庭に向いているのかを丁寧に解説していきます。
法定後見制度(認知症になった後に使う制度)
法定後見制度は、すでに判断能力が低下している人のために、家庭裁判所が後見人を選任する制度です。
つまり、認知症が進行してから利用する制度であり、本人の意思で後見人を選ぶことはできません。
法定後見には、判断能力の程度に応じて次の3種類があります。
◆ 後見(判断能力がほぼない)
◆ 保佐(判断能力が著しく不十分)
◆ 補助(判断能力が不十分)
家庭裁判所が本人の状態を判断し、適切な類型を決めます。
ここで重要なのは、家族が後見人になれるとは限らないという点です。
実務では、家庭裁判所が「専門職後見人(司法書士・弁護士など)」を選任するケースが増えています。
これは、家族間のトラブル防止や、財産管理の透明性を確保するためですが、家族としては「知らない専門家が親のお金を管理するのは不安」という声も多くあります。
【法定後見のメリット】
◆ 認知症になっても財産管理が可能になる
◆ 悪質な契約や詐欺から本人を守れる
◆ 法律に基づく制度なので安心感がある
特に、訪問販売や高額なリフォーム契約など、認知症の方が狙われやすいトラブルを防ぐ効果は大きいです。
【法定後見のデメリット】
◆ 家族が後見人になれない場合がある
◆ 不動産売却には家庭裁判所の許可が必要
◆ 毎年の報告義務があり、手間と費用がかかる
◆ 相続対策(贈与・節税など)は基本的にできない
特に誤解されやすいのが、「後見人になれば自由に財産を動かせる」という点です。
実際には、後見人は本人の財産を“守る”ことが役割であり、積極的な財産活用や相続対策はできません。
そのため、後見制度だけで相続対策を完結させるのは難しいのが現実です。
任意後見制度(元気なうちに契約しておく制度)
任意後見制度は、本人が元気なうちに「将来の後見人」を自分で選んでおく制度です。
法定後見と違い、信頼できる家族や親族を後見人に指定できるため、柔軟な財産管理が可能になります。
ただし、任意後見契約を結んでも、すぐに効力が発生するわけではありません。
実際に効力が発生するのは、認知症が進行し、家庭裁判所が「任意後見監督人」を選任した時点です。
つまり、
契約は元気なうちに、効力は認知症になってから
という仕組みになっています。
【任意後見のメリット】
◆ 信頼できる人を後見人に選べる
◆ 将来の財産管理を自分の意思で決められる
◆ 家族信託と併用すると非常に強力
特に、家族信託と組み合わせることで、認知症対策と相続対策を両立できるケースが増えています。
【任意後見のデメリット】
◆ 契約しても、すぐには効力が発生しない
◆ 任意後見監督人がつくため費用がかかる
◆ 家族信託ほどの自由度はない
任意後見は「将来の安心」を確保する制度ですが、財産の積極的な活用には向いていません。
後見制度は“万能”ではない
後見制度は、本人を守るための制度であり、家族の利便性を高める制度ではありません。
そのため、次のような目的には向いていません。
◆ 相続税対策(贈与・節税)
◆ 不動産の積極的な売却・運用
◆ 家族の生活費の補填
◆ 二次相続まで見据えた承継設計
これらを実現したい場合は、後見制度だけでは不十分で、家族信託などの別の制度と組み合わせる必要があります。
実務でも、後見制度を利用しながら家族信託を併用するケースが増えており、より柔軟な財産管理が可能になっています。
次回は、認知症対策として注目されている「家族信託」について、実例を交えながら詳しく解説します。
行政書士法人エニシアでは、後見制度・家族信託・認知症対策のご相談を幅広く承っています。
「うちの親の場合はどの制度が合っているのか」「後見制度を使うべきか迷っている」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
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