2025/11/28
スタッフBlog|(続)遺言をのこす理由
2025/11/28
スタッフBlog|(続)遺言をのこす理由
こんにちは。行政書士・宅地建物取引士の長田(おさだ)です。
前回、なぜ「遺言」をのこすのか、その理由にフォーカスして、その1「争族を避けたい」、その2「スムーズな遺産相続手続」、その他「税務や事業承継との関係」というお話を取りあげたところ、”その他”のところで挙げた『相続税の節税対策』 という例についてもう少し詳しく知りたいという声を頂きました。
今回は、その声にお応えし、遺言と”相続税の節税対策”の関係の基本例をひとつお話ししたいと思います。
また、せっかくなので遺言をのこす別の理由も、前回に付け加える形でご紹介しますね。
① 相続税制度の特例
相続においては、遺産の合計額が相続税の基礎控除額(3,000万円+法定相続人の数×600万円)を超えている場合、その超えた分に対して相続税が課税されます。
ただし、亡くなった方の自宅を、配偶者や同居の親族が相続または遺贈によって取得した場合、一定の要件を満たしていれば、相続税計算上の土地評価額を最大で80%減額することができる特例があり、「小規模宅地等の特例」と呼ばれています。
ところが、この特例は単に要件を満たしているだけでは適用を受けることはできず、(亡くなったことを知った日の翌日から)10か月以内に相続税の申告を行うことが必須とされています。
せっかく特例を受ける要件に該当しているのに、遺産分割協議がまとまらないためにこの申告期限を過ぎてしまうと、「特例が受けられず、本来納める必要のなかった税金を余計に納めなければならなくなった」となってしまうのですが、このような事態はぜひとも避けたいところです。
この点、遺言をしておき分割協議をする必要をあらかじめなくしておくと、申告期限を過ぎてしまうことなく特例適用を安心して受けられます。
前回、遺言をしておく理由・メリットとしてご紹介したのは、これが単に争族を避ける、手続をスムーズにするという観点だけでなく、一歩進んで、“せっかくの特例受けるチャンスをみすみす逃してしまわないように”ということをお伝えしたかったからです。
② 理由(その4)-法定相続人以外の方へ渡す
さて、せっかくですから、前回に加えてもう一つ、遺言をのこす理由のお話しをしましょう。
亡くなった方が遺言をのこしていない場合、遺産は法定相続人が引き継ぐことになります。民法上、法定相続人になりうるのは配偶者、子・孫など直系卑属、父母・祖父母など直系尊属、兄弟姉妹です。生前に贈与などを行っている場合を除き、内縁の配偶者や長男の妻、孫など法定相続人ではない方には本来遺産を遺すことができません。
しかし、自分の身の回りの世話などでお世話になった方、かわいがっている孫に直接財産を遺して渡したいと考える方もいると思います。
このような場合は、遺言でその意思表示をしておくことで、法定相続人以外の方にも遺産を遺すことができます。
ただし、むやみに法定相続人以外の方へ遺産を遺すことは、遺された方々の間でわだかまりが生じる原因になりかねません。このような遺言をする場合は、遺言をする方と、法定相続人となる方、法定相続人以外の遺産を受け取ることになる方との間で十分なコミュニケーションがとれていることが大切です。
なお、法定相続人となる家族がいない方についても、お世話になった人や会社、慈善団体などに財産を寄付したい場合は、遺言で遺産を渡すことができます(このようなケースで遺言がない場合、遺産は最終的に国庫に帰属します)。
③ 税・その他の注意点
遺言により特定の方に無償で財産を譲ることを「遺贈(いぞう)」といいますが、この「遺贈」という言葉の文字の組み合わせが、「遺」言によって「贈」与すると読めるため、贈与税の対象になるように思えますが、遺贈により財産を取得した場合は、贈与税ではなく”相続税”の対象となり遺贈を受けた方に相続税がかかります。
相続税の制度上、配偶者、子、親以外の方へ遺贈を行ったときは、相続税額が2割加算になったり、相続人以外の方へ遺贈したときにはその他の税金が発生したりすることがありますので、どのような形で遺贈をするのが最も良いか税務面も忘れず気にする必要があります。
このほか、法定相続人には相続できる財産の最低保障額の権利(遺留分)があり、これを無視して遺言を行ってしまうと相続トラブルを招くことにつながるため、こちらも同様に注意しなくてはなりません。
遺言であらかじめ分割内容を決めておけば、こうした協議を省略でき、相続人の負担を大幅に軽減できます。特に不動産を含む相続では、遺言の有無が手続きのスピードを大きく左右します。
前回・今回と2回にわたり「遺言をする理由」というテーマでお送りしました。
次回は、今回の末尾で触れた「遺留分」についてお話ししたいと思います。














